2016.09.13更新

            Mallorca

地中海のスペインのマヨルカ島で、遅めの夏休みを過ごしました。 山あり、谷あり、コバルト色の透き通った海側に歴史的な建造物があり、人口約87万人のこの島には、ドイツ、ロシア、アフリカ、南アメリカ、スペイン本土から夏には約1400万人の観光客が訪れるといいます。ですが、 日本人を含むアジアの観光客があまりいない場所でした。

島ではパルマ・デ・マヨルカこと、首都パルマが一番大きな自治体で、カテドラルやベルベル城、ミロ美術館などがあります。パルマから車で北に30分の場所には 、音楽家のショパンと、文筆家ジョルジュ・サンドが過ごしたバルデモッサという人口2千人の山間の町があります。また、革製品で知られる商業的な街インカへもドライブして行ったのですが、途中にあるワイナリーでテイスティングも出来ます。夏になると欧州中から観光客が押し寄せ、マヨルカ島では観光業が大きな産業になっています。

あっという間に飛び立つ最終日になり、パルマ空港側の海辺のホテルに宿を取りました。 お土産を買うため、街に出て色々物色していたら、ビーチのプロムナードに多くの人混みが出来ていました。絵の具で描いた絵を両面ガラス貼り付け、なんと1ユーロで売っているために人混みが山のようにできていたのです。なぜ、こんなに安いのだろうか?材料費も出ないのにと、 写真を撮ろうとするとそのアーティストが「写真を撮るな」と叫ぶではありませんか。何か変だと思いつつ、 多くの人たちと絵を覗き込んでいると、後ろのバックパックが触れてている感じなので、振り返りましたが何もないようなので、また絵を見ていると、また 触られているようで、振り向いたらバックパックのファスナーが開いていました。娘が誕生日に買ってくれたケート・スペードの財布がありません。

振り向いた途端に、立っていた男性に「財布を返して!返しなさいよ」と、英語で言ったら、「俺は何も持っていないよ」としらばっくれました。ストリート・アーティストも叫び始め、「お金を返せ。警察を呼ぼうか」とその男にいいます。私の財布の中には現金だけでなく、クレジットカード、銀行や保険カード、カリフォルニアの運転免許証、そしてグリーンカードも入っていたので、下手をするとしばらくアメリカに戻れなくなります。私も必死に取り戻そうとしたのですが、しかし、財布は仲間の手に渡ってしまったようで、何処にもありません。その怪しい男性は「じゃ一緒に警察に行こう。あそこにあるから」と、私と一緒に歩き始めました。しかし、途中で駆け出していってしまい、必死に追いかけたのですが、角を何度も曲がって行き、途中で何処に行ったか分からなくなりました。後から考えると、刺されたりしなかっただけでも良かったのかもしれません。

警察に連絡しなければと、先にお土産を買った店舗に行って事情を話し、警察に電話してもらいました。ですが地元の警察は「多忙を極めるのでホテルに戻って、インフォメーションに状況を話して欲しい」とのことでした。ビーチ沿いを歩いてホテルに戻る途中、自分の手に アート作品が1点あったので、それを戻しに行きました。アーティストは「ここで、多くの観光客が財布を盗まれていく。一人が盗んで、他の仲間に渡すのを多く見かけるんだ」と大衆に大声で訴えていました。「お金を全部取られたので、1ユーロ払えなくなったので、返します」と、彼に渡しました。

ホテルに戻って事情を話すと、レセプションの英語のわかる男性がオンラインでレポートを書いてくれました。プリントアウトし「これをもって、歩いて最寄りの警察に行くように」と言われたのですが、その前にクレジットカードや銀行のカードを全部止めないといけません。 ホテルの部屋から電話した銀行の中には、カードがなくなった場合、コレクトコールで受け付けてくれる銀行があることを知りました。国際電話で何箇所も電話していたので、警察に着いた頃は夜中を過ぎていました 。最初はスペイン語が自由でない外国人の身なので、最初に出てきた 警察官に追い返されそうになりました。ですが、ホテルでもらったレポートを出すと、しばらく待つように言われ、英語のできるオフィサーがポリス・レポートを書いてくれました。アーティストと、盗んだ男性、財布を持ち去った男性、少なくとも三人のグループによる窃盗のようだとのことでした。人混みの中ではバックパックはサンフランシスコ風に後ろに背負うのではなく、前側にするべきでした。また、なぜ、色々持ち歩いていたかというと、ホテルのセーフティボックスが壊れていて、閉まらなかったからです。こうした場合はフロントに戻って、別の部屋に変えてもらうべきでした。しかし、後悔先に立たずです。

月曜から仕事なのに。グリーンカードも無しで 、アメリカに戻れるのでしょうか。幸いなことにパスポートは取られませんでしたが。上司に状況を説明すると、「会社のことは心配しなくても良いから無事に戻って下さい」と、優しい 言葉をかけて頂き、組織に属しててよかったと本当に感じました。

ですが、空港に行くタクシー代もバス代すらない一文無しになった上に、グリーンカードがない。寝ようとしても眠れませんでした。朝5時ごろシャワーを浴び、フロントに降りるとナイトマネジャーがタクシー会社に電話してくれ、クレジットカード番号があるので、それで乗れないかと交渉してくれたのですが、ダメでした。彼は「心配しなくていいよ」と、自分の財布から15ユーロを出して、タクシー代を払ってくれたのです。

空港に着くと、ポリス・レポートで同情してくれた空港の人々が、優先的に先に入れて くれたり、カードが無いのにラウンジに入れてくれたり、心温まる扱いを受けました。パルマ空港のラウンジの女性は「夏だけ観光客があちこちから大量に押し寄せてきて、その観光客を狙って泥棒たちも来る。数があまりに多いので、対処できなくて私たちの島では大きな問題になっている。バスの中でもスリを日常茶飯で目撃するわ。私は夏の間は絶対、空港側のビーチには立ち寄らない」などと、色々話してくれました。つまり、典型的な泥棒の被害者になったという訳です。スペインは今まで何度も来ていたのですが、こうした窃盗の被害にあったことがなく、自分を過信していたようです 。 パスポートとビザチェックのオフィサーに「グリーンカードを盗まれ、お金が全部無くなった」と言うと、通してくれました。ただ、飛び立つ直前 、スマホにあるグリーンカードのコピー写真だけでは乗せられないと止められました。「大使館に行って、渡航を許可するペーバーが必要」と言われました。「クレジットカードもお金も全部取られたので、今からどうやっても大使館には行けない」と粘った のですが「ボーダー・パトロール(国境管理)の許可がないと、規則で飛ばせられない」と 、航空会社の職員はいいます。彼女は電話で、ずっと国境管理官と話して いました。ひょっとして、トム・ハンクスの映画「ターミナル」にあったように、私はこの空港に住み着くようになるのかなぁ。ラウンジでご飯を食べつないだりしてと、本当に心細くなりました。

しばらく搭乗口で待たなければなりませんでした。電話していた職員の女性が「国境管理官が乗っていいって!」と、遅れてしまいましたが搭乗を許可されました!「ビバ!アメリカ」なのか「ビバ!スペイン」なのかしら。ようやく機中の人になれ ました! 色々あって、本当に忘れられない夏休みになりましたよ。治安の良い国で育ったアジアの旅行者はターゲットにされることが多いそうです。 とにかく、泥棒は被害者を狙って、知的武装しているので、ホリディといってもくれぐれも油断されないでくださいね。アップルのウォレットとか、サムソンペイとかは今まで、ハッカーが怖くて、敬遠してきましたが、今回の件でそういったものを使うのも、少し良いのかなと思いましたけど、スマホ本体を盗まれたらとかで困りますし、どんなものでしょうか。ご参考までに、以下 は在バルセロナ日本領事館のスペイン旅行中の注意事項をお伝えするのURLです。http://www.barcelona.es.emb-japan.go.jp/japones/anzen.htm

追記:サンフランシスコ国際空港のイミグレーション・オフィサー数人が対応下さった後、別室のオフィサーが対応して下さいました。スペインから今回の報告が来ていたみたい。色々あって外に出た時、アメリカに無事戻れて、本当に良かったと思いました。お金は無いですが、クリッパーカードで移動できました。ですが、個人情報が盗まれたので、これから色々と対処しなければいけません。そうすることが次の被害者を出さないことに繫がるかもしれませんし…。

投稿者: Ayako Jacobsson